日産、売れば売るほど赤字？2024年決算から読み解く自動車業界

日産自動車の2024年決算は、売上減少と大幅な営業減益という厳しい結果となりました。これは、日産が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。本記事では、この決算の詳細を深掘りし、その背景にある要因、今後の展望、そして自動車業界全体への影響を多角的に分析します。結論として、日産の現状は決して楽観視できるものではありませんが、構造改革とBEV（電気自動車）戦略の加速によって、将来的な成長の可能性は十分に秘められています。

1. 売上減少と大幅減益：決算結果の詳細分析

日産自動車は、2024年度の決算において、厳しい結果を報告しました。

2024年度の売上高は前年から525億円(0.4%)減少し、12兆6,332億円となりました。営業利益は698億円となり、前年度に対して4,989億円(87.7%)の減益となりました… 引用元: 2025年３月期決算短信〔日本基準〕(連結)

売上高はわずかに減少したものの、営業利益は大幅に減少しており、その減少幅は87.7%にも及びます。これは、日産が車を販売する際に、コストが売上を上回る状況に陥っていることを示唆しています。つまり、車を売れば売るほど、会社のお金が減ってしまうという、まさに「負の連鎖」に陥っていると言えます。この状況を招いた要因を多角的に分析することが重要です。

2. 利益率低下の要因：コスト増、販売促進費、そして円安の影響

売上の伸び悩みだけでなく、日産の利益率も大きく落ち込んでいます。

売上高営業利益率 %, 4.5％, 0.6％, -3.9ポイント引用元: 日産自動車、2024年度決算を発表

2024年度の売上高営業利益率は0.6%と、かつての4.5%から大きく低下しました。これは、自動車製造を取り巻く複数の要因が複合的に作用した結果と考えられます。

コスト増: 半導体不足や原材料価格の高騰は、自動車メーカーにとって大きな負担となっています。特に、金属、プラスチック、電子部品などの価格上昇は、製造コストを押し上げる主要因です。半導体不足は供給制約を引き起こし、生産の遅延や効率の低下を招いています。
販売促進費: 競争激化は、値引きや販売奨励金の増加を促し、利益率を圧迫します。自動車市場は成熟化しており、各メーカーは販売台数を維持するために、積極的な販売戦略を展開せざるを得ません。
円安: 円安は、海外での利益を円換算する際に目減りさせるだけでなく、輸入部品のコストを上昇させる要因にもなります。特に、海外生産が多い日産にとっては、円安の影響は無視できません。

これらの要因は、自動車メーカーの収益性を悪化させ、経営を圧迫する要因となっています。

3. 上半期の苦戦：事業改善の必要性

2024年度の上半期（4月から9月）の決算も、日産にとって厳しいものでした。

2024年度上期の連結売上高は前年同期比791億円減の5兆9,842億円、連結営業利益は同3,038億円減の329億円、売上高営業利益率は0.5％引用元: 日産自動車[7201]：日産自動車、2024年度上期決算を発表 2024年11…

売上高は減少し、営業利益は大幅に減少し、売上高営業利益率はわずか0.5％と、非常に厳しい状況が続いています。

日産自動車は2024年11月7日、2025年3月期第2四半期（2024年4～9月期）の決算を発表した。売上高は前年同期比1.3％減の5兆9842億円、営業利益が同90.2%減の329億円引用元: 2024年度の営業利益は7割減の見通し、日産が事業改善を急ぐ：製造 …

このような状況を打開するためには、以下の施策が不可欠です。

コスト削減: 生産効率の向上、サプライチェーンの見直し、間接部門の効率化など、多角的なコスト削減策を講じる必要があります。具体的には、生産拠点の最適化や、部品調達コストの削減などが挙げられます。
新車投入: 人気のある新型車の投入は、販売台数の増加に貢献します。特に、SUVやEVなど、市場のニーズに合致した車種を投入することが重要です。
BEV（電気自動車）戦略: 世界的なEVシフトに対応するため、競争力のあるBEVの投入を加速する必要があります。日産は、アライアンスを組むルノーとの連携を強化し、EVプラットフォームやバッテリー技術の開発を進めることが求められます。

4. 2025年の日産：構造改革とBEV戦略の成否が鍵

日産は、2025年3月期の通期業績予想を発表しています。

2024 年度通期の連結売上高は 12 兆 6,332 億円、連結営業利益は 698 億円、売上高営業利益率 0.6% 引用元: 日産自動車、2024 年度決算を発表

2024年度は厳しい結果となりましたが、2025年も油断できません。経営陣は、事業改善を急いでいます。具体的な取り組みとしては、コスト削減、新車の投入、BEV戦略の加速が挙げられます。特に、EVシフトへの対応は、日産の将来を左右する重要な要素です。

5. 自動車業界の構造変化と日産の今後

日産の現状は、自動車業界全体が直面する構造的な変化の縮図とも言えます。

EVシフト: 世界的なEVシフトは加速しており、各メーカーはEVへの投資を拡大しています。しかし、EVの開発・製造には多額の投資が必要であり、既存のガソリン車ビジネスとのバランスが難しいという課題があります。
CASE（コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化）: CASEと呼ばれる技術革新は、自動車業界の競争環境を大きく変えています。日産は、これらの技術に対応するため、積極的な投資と技術開発を進める必要があります。
新興国の台頭: 中国などの新興国メーカーが台頭し、グローバル市場での競争が激化しています。日産は、これらの新興国メーカーとの競争に勝ち抜くために、競争力のある製品と戦略を打ち出す必要があります。