最近、ニュースやSNSで「外国人の犯罪率が日本人の1.72倍」という衝撃的な数字が話題になっているのをご存じでしょうか?「え、そうなの?」「日本の治安ってどうなっちゃうの?」と、不安に感じたり、疑問に思ったりした方もいらっしゃるかもしれませんね。
警察庁が発表した「短期滞在者を除く外国人の犯罪率は日本人の1.72倍」という数値は、統計的な事実として存在します。しかし、この数字を安易に解釈し、単純に「外国人は日本人より犯罪を犯しやすい」と結論づけることは、社会全体に誤解と偏見を招く危険性を孕んでいます。 本記事では、この数字の背景にある統計学的な留意点、社会経済的要因、そして日本の外国人政策における課題を多角的に分析し、より建設的な議論のための基盤を提供します。プロのライターとして、このデリケートな問題を深掘りし、皆さんが情報に惑わされることなく、本質を理解できるよう徹底解説していきます。
1. 「1.72倍」の統計学的真実:警察庁が示した具体的な数字の検証
事の発端は、2025年11月20日に行われた参議院内閣委員会での一幕でした。参政党の大津力氏の質問に対し、警察庁の重松弘教刑事局長が、ある数字を明らかにしました。それは、2024年の犯罪検挙率において、短期滞在者(観光客など)を除いた外国人の犯罪率が、日本人の1.72倍だったというものです。
この数字は、以下のように具体的な統計に基づいて算出されています。
- 日本人の検挙率: 昨年の日本人の検挙数22万6038人を同年12月1日現在の日本の総人口で割ると、0.188%。
- 短期滞在者を除く外国人の検挙率: 在留外国人の検挙数1万2173人(入管難民法違反を除く)を在留外国人数で割ると、0.323%。
そして、この二つの数字を比較すると、0.323% ÷ 0.188% ≒ 1.72倍となるわけです。
警察庁の重松弘教刑事局長は、便宜上の数字として、昨年の日本人の検挙数22万6038人を同年12月1日現在の人口で割ると0.188%、短期滞在を除く外国人の入管難民法違反を除く検挙数1万2173人を在留外国人数で割ると0.323%ーと示し、「日本人を1とすると、外国人は1.72」とした。
引用元: 外国人の犯罪率は日本人の1.72倍 警察庁が短期滞在者除いた数字を参院内閣委で答弁(産経新聞)
この引用が示すように、この「1.72倍」という数値は、警察庁が公的に発表したものであり、その算出プロセスも明示されています。ここで重要なのは、「犯罪率」という言葉が一般的に使われていますが、厳密には「検挙数/人口」で算出される「検挙率」であるという点です。犯罪発生件数そのものではなく、検挙された件数を基にしているため、警察の捜査体制や検挙能力も影響を及ぼす可能性があります。しかし、いずれにせよ、日本人と在留外国人という二つの集団間で検挙率に明確な差があることを示す、無視できない統計的事実であると言えます。この事実は、日本の治安状況、特に在留外国人の社会統合の進捗度合いを評価する上で、極めて重要な一次情報となります。
2. なぜ「短期滞在者を除く」が重要なのか?統計的妥当性の追求
「外国人の犯罪率」を議論する際、これまでは「観光客も含めた全体で見ると、そんなに高くない」といった話を聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、今回の発表がこれほどまでに注目されるのは、「短期滞在者を除く」という点が、統計比較の妥当性を高める上で非常に重要であるからです。
参政党の大津力議員は、まさにこの点に注目し、「短期滞在者を分母に含めると正当な比較ができない」と指摘し、今回の答弁を引き出しました。
大津氏が、短期滞在者を分母に含めると正当な比較ができないとしてたずねた。
引用元: 警察庁が、昨年の外国人の犯罪率は日本人の1.72倍だったという数字を20日の参院内閣委員会で明らかにした。(livedoor Blog)
この引用は、統計学における比較集団の均質性(Homogeneity of Comparison Groups)という原則に基づいた、極めて重要な指摘です。短期滞在者、つまり観光などで一時的に日本を訪れる人は、在留資格を持つ外国人と比べて、日本にいる期間が短く、活動範囲も限定的です。彼らは日本の社会システムに深く関わる機会が少なく、したがって犯罪に関わる機会や可能性も、当然ながら在留外国人とは大きく異なります。
これまでの統計では、短期滞在者を含めることで全体の検挙率が「希釈(きしゃく)」され、日本社会に定着して生活している在留外国人の検挙率の実態が見えにくくなっていた可能性が指摘されています。例えば、分母に一時的に滞在する多数の観光客が含まれる場合、犯罪を犯す可能性のある期間が短いため、全体の「率」が低く算出されがちです。
今回の「短期滞在者を除く」という条件設定は、より日本の社会に根差して生活している外国人と、日本人との間で検挙率を比較する上で、統計的により実態に近い数字を提供しようとする、学術的に妥当性の高い試みと言えるでしょう。この条件設定により、単なる「外国人全体」という括りではなく、「日本の社会に一定期間以上滞在し、生活基盤を持つ外国人」という、より均質な集団間の比較が可能になったのです。
3. この数字、単純に比較していいの?専門家が指摘する注意点と背景要因の深掘り
さて、ここで大切なのが、この「1.72倍」という数字を、そのまま「外国人は日本人より1.72倍犯罪を犯しやすい」と単純に解釈していいのか?という点です。
実は、警察庁の重松刑事局長自身も、答弁の中で「単純比較は困難」と強調しています。
警察庁の重松刑事局長は、日本人の検挙率0.188%に対し、在留外国人(短期滞在者除く)のそれは0.323%で「日本人を1とすると1.72倍」と答弁しました。ただ、年齢構成の違いなどから「単純比較は困難」とし、厳正な対処と連携を強調。
引用元: 警察庁が明らかに、在留外国人の犯罪検挙率は日本人の1.72倍
この「単純比較は困難」という警察庁の見解は、統計学や犯罪社会学の観点から非常に重要です。その背景には、以下のような複数の要因が複合的に絡み合っていると考えられます。
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年齢構成の違い(デモグラフィック・バイアス):
- 日本の総人口には、乳幼児から高齢者まで、広範な年齢層が含まれています。特に、高齢者の割合は世界トップクラスです。
- 一方、短期滞在者を除く在留外国人の多くは、留学、技能実習、就労などの目的で来日しており、統計学的に犯罪に関わりやすいとされる若年層や働き盛りの年齢層(15歳から40歳代)が、相対的に多くを占める傾向にあります。犯罪社会学において、この年齢層は一般的に犯罪関与率が高いとされており、これは文化や国籍を超えた普遍的な傾向です。
- 例えば、高齢者が多い集団と若年層が多い集団で比較すれば、後者の犯罪関与率が高く出るのは自然なことであり、これを個人の資質や国籍に起因するものと断じるのは、統計的誤謬(Ecological Fallacy)に陥る可能性があります。正確な比較のためには「年齢調整済み犯罪率」のような手法を用いる必要があります。
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社会経済的要因と環境的脆弱性:
- 在留外国人の中には、経済的に厳しい状況にある者が少なくない可能性があります。例えば、技能実習生や特定技能労働者の中には、低賃金、労働環境の問題、失業、生活困窮といった状況に置かれやすい人々も存在します。
- 犯罪社会学では、社会経済的剥奪(socioeconomic deprivation)が犯罪発生率を高める要因の一つであることが広く認識されています。貧困や格差は、生活の安定を脅かし、結果として窃盗や詐欺などの財産犯に走るインセンティブを生み出すことがあります。
- また、日本社会での文化・言語の壁、あるいは孤立感は、適切な支援へのアクセスを妨げ、ストレスや精神的な負担を増大させ、これも犯罪リスクを高める要因となり得ます。
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犯罪の種類による偏り(特定の罪種への集中):
- 提供情報にもあるように、「警察統計上、来日外国人(定義により永住者等を除く)では、万引き・詐欺など一部の罪種で検挙数が多い」という指摘があります。
警察統計上、来日外国人(定義により永住者等を除く)では、万引き・詐欺など一部の罪種 引用元: 「外国人の犯罪率は日本人の1.72倍」は何を意味するのか――数字…
- 万引きや詐欺は、経済的な困窮や、組織的な犯罪グループによる指示、情報格差を利用した特殊詐欺など、多岐にわたる背景が考えられます。特に詐欺は、国際的な組織犯罪に発展するケースも少なくありません。
- 入管難民法違反は今回の統計からは除外されていますが、例えば不法滞在や不法就労といった不安定な法的・経済的地位が、他の一般刑法犯の検挙リスクを高めるという相関関係も無視できません。
- 提供情報にもあるように、「警察統計上、来日外国人(定義により永住者等を除く)では、万引き・詐欺など一部の罪種で検挙数が多い」という指摘があります。
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検挙のされやすさの違い(バイアス):
- 言語の壁や日本の法制度への理解不足から、意図せず法を犯してしまうケースや、取り調べにおいて不利な状況に置かれやすい可能性も考慮する必要があります。
- また、警察の捜査において、特定の外国人コミュニティや特定の国籍に対する「プロファイリング」的な監視強化が行われる可能性も否定できません。これは、統計上の検挙率を高める要因となることがあります(ただし、これは慎重に、可能性としてのみ指摘すべき点です)。
これらの要素を考慮せず、単純に数字だけを比較するのは、本質を見誤り、外国人全体に対する不当なレッテル貼りを助長する危険性がある、ということなんですね。
4. この数字が問いかけるもの:日本の外国人政策と多角的議論の必要性
今回の警察庁の発表は、日本の外国人政策や治安問題に関する議論に一石を投じるものとなりました。特に、これまで「外国人が増えても犯罪は増えない」といった言説に対して、「実態はどうなのか」という疑問が投げかけられ、社会的な関心が高まっています。
X(旧Twitter)では、この発表を受けて、以下のような声が多数見られます。
「いままで、隠れていた数値です。白日の元にさらした大津参議に拍手。」
引用元: 警察庁が明らかに、在留外国人の犯罪検挙率は日本人の1.72倍「『外国人による犯罪は増えていない』こそが誤情報であることが明らかになりましたね!」
引用元: 警察庁が明らかに、在留外国人の犯罪検挙率は日本人の1.72倍
これらの意見は、これまで外国人に関する犯罪統計が一部で隠蔽されてきた、あるいは都合の良い解釈がされてきたのではないかという、社会に潜在していた不信感が顕在化したものと解釈できます。統計データが公開され、その解釈が多角的に行われることは、健全な民主主義社会において不可欠なプロセスです。
また、外国人政策に関する議論は、犯罪率に留まりません。同じく参政党の吉川里奈副代表は、外国人受け入れの「総コスト」について法相に質問しましたが、法相からは「計算していない」との答弁がありました。
外国人受け入れ総コスト 平口法相「計算していない」 参政・吉川里奈氏「蛇口閉めよ」
引用元: 藤本かずき|参政党青年局長|福井県議会議員(最年少…)
この引用は、日本の外国人政策が、「治安」という側面だけでなく、「経済的負担」「社会保障」「社会統合プログラム」といった多岐にわたる側面からの包括的なコスト・ベネフィット分析や、長期的なビジョンに基づいた戦略的な立案が十分に果たされていない現状を示唆しています。経済協力開発機構(OECD)諸国では、外国人受け入れ政策の経済的・社会的影響に関する包括的な評価が行われるのが一般的であり、日本もこの点において改善の余地があると言えるでしょう。
警察庁は、今回の答弁で「違法行為については法と証拠に基づいて厳正に対処する」としており、今後の外国人による犯罪への対策強化も示唆しています。
警察庁は、今回の答弁で「違法行為については法と証拠に基づいて厳正に対処する」
引用元: 外国人の犯罪率は日本人の1.72倍 警察庁が短期滞在者除いた数字を参院内閣委で答弁(産経新聞)
この姿勢は、法治国家として当然の対応であり、治安維持の観点からは不可欠です。しかし、対策は単なる取り締まり強化に留まらず、犯罪の背景にある社会経済的要因や構造的な問題を解決するための、より包括的なアプローチが求められます。例えば、外国人労働者の労働環境改善、適切な生活・法律相談支援、日本語教育の充実、多文化共生社会の推進などが、中長期的な視点から犯罪リスクを低減し、健全な社会統合を促進するために不可欠な要素となります。
私たち一人ひとりが、このようなデータを冷静に受け止め、感情論に流されることなく、より良い社会のあり方を議論していくことが求められています。
まとめ:数字の裏側にある「本当の声」を聞き、未来を語ろう
警察庁が発表した「短期滞在者を除く外国人の犯罪率は日本人の1.72倍」という数字は、単なる表面的な数値以上の深遠な意味を持っています。この数字は、日本の外国人政策の現状、社会統合の課題、そして統計データの適切な解釈の重要性を私たちに突きつけています。
本記事で深掘りしたように、この「1.72倍」という数字は統計的な事実でありながらも、
* 「短期滞在者を除く」という条件が、統計的妥当性を追求する上で不可欠な配慮であること
* 「単純比較が困難」な理由として、年齢構成、社会経済的要因、特定の罪種への偏りなど、複雑な背景が存在すること
* この数字が、日本の外国人政策における情報開示、コスト・ベネフィット分析、そして包括的な社会統合戦略の欠如という、より大きな課題を浮き彫りにしていること
が明らかになりました。
大切なのは、感情的に数字に飛びつき、特定の集団に対する差別や偏見を助長するのではなく、客観的な事実に基づき、その背後にある複雑なメカニズムを理解しようと努めることです。私たちは、この数字を日本の外国人政策を再評価し、より持続可能で、誰もが安心して暮らせる共生社会を築くための出発点と捉えるべきです。
日本の治安を守り、多様性を尊重し、誰もが安心して暮らせる社会を築くためには、これからも、正確な情報と専門的な知見に基づいて、建設的な議論を重ねていく必要があります。今回の記事が、皆さんがこの問題について深く考え、将来の日本社会を共に形作るための貴重なきっかけとなれば幸いです。


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