【速報】ドラえもんバイバインで宇宙は埋まる?計算と結論

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【速報】ドラえもんバイバインで宇宙は埋まる?計算と結論

結論:ドラえもんの「バイバイン」をもってしても、宇宙を「埋める」ことは現実的には不可能であり、その時間は想像を絶するほど長大です。もし仮に、バイバインで増殖させられる物体を「点」と定義し、宇宙の体積を「点」で埋め尽くすという極端な仮定を置いたとしても、その完了には宇宙の年齢を遥かに超える時間がかかり、さらに宇宙自体の膨張という根本的な問題に直面します。


1. 「バイバイン」の超絶的な増殖能力と「宇宙」の定義

ドラえもんのひみつ道具「バイバイン」は、対象物を10倍に増やすという、極めて強力な能力を持ちます。この道具の真価は、その「指数関数的な増殖」にあります。例えば、1個の物体をバイバインで増殖させると、10個になり、さらに10個を増殖させれば100個、そして100個を増殖させれば1000個と、わずかな操作で爆発的に数が増加します。この増殖率は、数学的には等比数列あるいは指数関数として表現されます。

一方、「宇宙」という言葉は、その文脈によって様々な意味合いを持ちます。一般的には、私たちが観測できる範囲を超えた広大な空間、あるいは「すべての物質とエネルギー、そしてそれらが存在する時空の総体」を指します。天文学や宇宙論では、地球の大気圏外の空間を「宇宙空間」と呼び、その境界線としてカーマン・ライン(高度100km)が定義されています。しかし、これはあくまで人工的な定義であり、真の宇宙の広がりは、その「観測可能な範囲」をもってしても、想像を絶するスケールを持っています。

参考情報にあるように、「宇宙」は「宇(天地四方上下)」と「宙(往古来今)」を合わせた言葉であり、時空全体を意味するという説もあります。現代宇宙論では、宇宙はビッグバンによって誕生し、現在も膨張を続けていると考えられています。その広がりは、単なる空間的な広さだけでなく、時間的な経過とともに変化するダイナミズムをも含んでいます。

2. 宇宙の広大さを「バイバイン」で埋める試算:現実性の壁

では、この「バイバイン」の力をもって、宇宙を「埋め尽くす」ことは可能なのでしょうか。ここでまず検討すべきは、「何を」「どのように」埋め尽くすのかという定義です。

2.1. 「体積」を「点」で埋める:極端な仮定に基づく計算

最も単純な仮定として、宇宙を「点」で満たされた空間とみなし、「バイバイン」で増殖させた物体(例えば、渺小な粒子)でその「点」を一つずつ埋めていくシナリオを考えてみましょう。

  • 観測可能な宇宙の体積: 観測可能な宇宙の半径は、宇宙の膨張を考慮すると、約450億光年と推定されています。光年(ly)は距離の単位であり、1光年は光が1年間に進む距離です。
    $$1 \text{ ly} \approx 9.461 \times 10^{15} \text{ m}$$
    観測可能な宇宙の半径を $R_{obs} \approx 450 \text{ 億光年} = 4.5 \times 10^{10} \text{ ly}$ とすると、その体積 $V_{obs}$ は球体として概算できます。
    $$V_{obs} = \frac{4}{3}\pi R_{obs}^3$$
    $$V_{obs} \approx \frac{4}{3}\pi (4.5 \times 10^{10} \text{ ly})^3 \approx \frac{4}{3}\pi (4.5 \times 10^{10} \times 9.461 \times 10^{15} \text{ m})^3$$
    $$V_{obs} \approx \frac{4}{3}\pi (4.257 \times 10^{26} \text{ m})^3 \approx 3.2 \times 10^{80} \text{ m}^3$$
    この体積を、例えば1立方ミリメートル ($1 \text{ mm}^3 = 1 \times 10^{-9} \text{ m}^3$) の粒子で埋め尽くすと仮定します。
    必要な粒子の総数 N は、
    $$N = \frac{V_{obs}}{1 \text{ mm}^3} \approx \frac{3.2 \times 10^{80} \text{ m}^3}{1 \times 10^{-9} \text{ m}^3} \approx 3.2 \times 10^{89} \text{ 個}$$
    となります。

  • バイバインによる増殖時間:
    最初の1個の物体を、バイバインで10倍ずつ増殖させていくとします。必要な操作回数 $k$ は、
    $$10^k \ge N$$
    $$k \log_{10} 10 \ge \log_{10} N$$
    $$k \ge \log_{10} (3.2 \times 10^{89})$$
    $$k \ge \log_{10} 3.2 + \log_{10} 10^{89} \approx 0.5 + 89 = 89.5$$
    つまり、約90回の増殖操作が必要になります。
    もし1回の増殖操作に1秒かかると仮定しても、90秒で十分な数の粒子が用意できることになります。これは、バイバインの能力がいかに驚異的かを示しています。

2.2. 宇宙の「総量」という視点:原子の数との比較

しかし、宇宙の広大さは単なる「体積」だけではありません。観測可能な宇宙には、約10の80乗個の原子が存在すると推定されています。この数と比較しても、前述の「1立方ミリメートルの粒子」で埋め尽くすというシナリオは、宇宙の「実質的な」広がりを過小評価したものです。

もし、バイバインで増殖させる対象が、宇宙に存在する原子の数(約$10^{80}$個)に匹敵するような、それ自体が意味を持つ物体であった場合、そしてそれらを宇宙全体に均一に配置しようとすると、話はさらに複雑になります。

2.3. 宇宙の膨張という「壁」

ここで、宇宙論における最も根源的な問題に直面します。それは「宇宙の膨張」です。宇宙は現在も加速膨張しており、遠方の銀河は私たちから光速を超えて遠ざかっています。

  • ハッブル定数と膨張速度: ハッブル定数 $H_0$ は、宇宙の膨張率を示し、約 70 km/s/Mpc(メガパーセクあたり秒速70キロメートル)とされています。1 Mpcは約326万光年です。
    $$H_0 \approx \frac{70 \times 10^3 \text{ m/s}}{3.26 \times 10^6 \text{ ly} \times 9.461 \times 10^{15} \text{ m/ly}} \approx 2.27 \times 10^{-18} \text{ s}^{-1}$$
    これは、1秒間に光速の約2.27 x 10⁻¹⁸倍の速度で、1パーセク(約3.086 x 10¹⁶ m)あたり膨張していることを意味します。
    つまり、宇宙のある一点から見ても、その「境界」は常に遠ざかっているのです。

バイバインで増殖させた物体を宇宙の「端」まで運んで配置しようとしても、その「端」自体が膨張によってさらに遠ざかっています。したがって、物理的に「宇宙を埋め尽くす」という行為は、宇宙の膨張という根本的なメカニズムによって、永遠に完了しない、あるいは永遠に追いつけない追跡劇となる可能性が高いのです。

たとえ「バイバイン」で増殖させた物体が光速で移動できたとしても、宇宙の膨張速度は、遠方では光速を超えます。これは、相対性理論における光速不変の原理とは矛盾しない、時空自体の性質です。

3. 膨大な時間スケール:宇宙の年齢との比較

仮に、宇宙の膨張が停止し、宇宙が静止しているという極端な仮定を置いたとしても、宇宙の広大さは依然として問題となります。

  • 宇宙の年齢: 現在の観測に基づくと、宇宙の年齢は約138億年(13.798 ± 0.037 Gyr)と推定されています。
    $$1 \text{ Gyr} = 10^9 \text{ years}$$
    $$1 \text{ year} \approx 3.154 \times 10^7 \text{ s}$$
    宇宙の年齢は約 $1.38 \times 10^{10} \text{ years} \times 3.154 \times 10^7 \text{ s/year} \approx 4.35 \times 10^{17} \text{ s}$ です。

観測可能な宇宙の「光路距離」(光が地球に届くまでに旅した道のり)は約138億光年です。もし、この138億光年という「距離」を、1個の物体から開始してバイバインで増殖させた物体で埋め尽くそうとする場合、さらに膨大な時間と増殖回数が必要になります。

仮に、138億光年という距離を、1光年ごとに分割し、それぞれの地点に物体を配置するとしましょう。単純計算で138億個の物体が必要ですが、バイバインの増殖能力を考慮しても、その「配置」という行為自体が、広大な空間での物理的な移動を伴います。

さらに、宇宙の「大きさ」や「範囲」を示す推定値として、ハートル=ホーキングの境界条件を使った $10^{10^{10^{122}}}$ メガパーセクという、想像を絶する巨大な値も存在します。これがもし宇宙全体の「体積」に関連する値だとしたら、バイバインの増殖能力をもってしても、その「埋め尽くし」にかかる時間は、宇宙の年齢とは比較にならないほど長大になるでしょう。

例えば、仮に宇宙の体積を、私たちが1秒間に1個の物体を配置できると仮定した場合、その完了には途方もない時間がかかります。バイバインの10倍増殖能力をもってしても、その「埋め尽くす」という行為の物理的な時間、あるいはそのための「操作」自体に、宇宙の年齢を遥かに超える時間がかかることは容易に想像できます。

4. 専門的な視点からの洞察:多元宇宙論と「埋める」ことの無意味さ

「バイバイン」で宇宙を埋め尽くすという思考実験は、宇宙の広大さと増殖能力の対比という点では興味深いですが、現代宇宙論の視点からは、いくつかの根本的な前提が成り立たない場合があります。

  • 「埋める」ことの定義: 宇宙は、単なる空虚な空間ではなく、ダークエネルギー、ダークマター、そして私たちが知る通常の物質(原子)で構成されています。これらの物質は、宇宙全体に均一に分布しているわけではなく、銀河、星団、そしてその間の広大な void(虚無)と、複雑な構造を形成しています。バイバインで増殖させた物体で「埋める」とは、この複雑な宇宙構造を破壊し、均一な状態にすることでもあり、それは「宇宙そのものを改変する」行為と言えます。

  • 多元宇宙論(Multiverse): 現代宇宙論や量子力学の一部では、私たちの宇宙以外にも無数の並行宇宙が存在する可能性(多元宇宙論)が議論されています。もし、宇宙が単一ではなく、無数の「宇宙」が存在するとすれば、バイバインで「一つの宇宙」を埋め尽くしたとしても、それは全体のごく一部に過ぎないということになります。

  • 宇宙の未来: 宇宙の未来は、ダークエネルギーの性質によって大きく左右されます。もしダークエネルギーによる加速膨張が続けば、将来的に遠方の銀河は観測不能になり、宇宙は分断されていくと予測されています(ビッグリップなど)。このようなダイナミックで変化し続ける宇宙を「埋め尽くす」という静的な概念は、根本的に適用が難しいと言えます。

5. 結論の再確認と深遠な示唆

ドラえもんの「バイバイン」は、日常的なスケールでは驚異的な増殖能力を発揮しますが、宇宙という極限的なスケールにおいては、その能力をもってしても「埋め尽くす」という行為は、文字通り「不可能」と言わざるを得ません。その理由は、宇宙の広大さに加えて、宇宙自体の「膨張」という動的な性質、そして我々が「宇宙」と呼ぶものの複雑さとダイナミズムにあります。

この思考実験は、私たちの想像力を刺激し、宇宙の驚異的なスケールと、増殖という概念の限界を浮き彫りにします。バイバインが描く「10倍」という増殖も、宇宙の果てしない広がり、そしてその未来における未知の可能性の前では、一つの原子のような、取るに足らない存在に過ぎないのかもしれません。宇宙は、単に「埋め尽くす」対象ではなく、私たち自身がその一部として存在し、探求し続けるべき、計り知れない存在なのです。


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