BE:FIRST、祝プレデビュー4周年 ― 『You’re My “BESTY” #60』が証明する「オーセンティシティ」という名の最強戦略
2025年08月17日
【序論】BE:FIRSTの成功を紐解く鍵 ― なぜ彼らは熱狂的なファンダムを築けたのか
2025年8月16日、プレデビュー4周年を迎えたBE:FIRST。同日公開された記念番組『You’re My “BESTY” #60』は、単なるファンへの感謝を伝えるコンテンツではない。本稿が提示する結論は、この動画こそ、BE:FIRSTの成功が、徹底した「オーセンティシティ（真正性）」の共有と、それによって形成された強固な「共創型コミュニティ」に根ざしていることを証明する、現代のアーティスト・ブランディングにおける一つの到達点である、ということだ。
本記事では、この記念番組をケーススタディとして、マーケティング理論や社会心理学の視点を取り入れながら、彼らの成功モデルの核心を多角的に分析・解明していく。
1. 「事務所すらない」原点の物語化 ― プロセス・エコノミーによる心理的オーナーシップの醸成
動画内で語られた「事務所すらなかった」という原点。これは単なる苦労話ではない。現代のマーケティングにおいて極めて重要な「プロセス・エコノミー」、すなわち完成品（アウトプット）だけでなく、そこに至るまでの過程（プロセス）そのものを価値として提供する戦略の実践である。
「あの一軒家の事務所も最初は無くて電車移動だったのね！皆が頑張ってビルまで建てて孝行息子達だわ」
このファンのコメントが示す通り、BMSGとBE:FIRSTは、オーディション番組『THE FIRST』の段階から、完成されたアイドルではなく、悩み、葛藤し、成長していく「過程」を余すことなく共有してきた。何もない場所から道を切り拓く物語は、ファンに単なる「消費者」ではなく、物語の「共犯者」「共同創造者」としての意識を芽生えさせる。これは、自らが関与したものに高い価値を見出す「イケア効果」と呼ばれる心理現象にも通じる。ファンは彼らの成功を自らの成功の一部として捉え、極めて強固な心理的オーナーシップ（当事者意識）を育むのだ。「事務所すらない」という原点の共有は、このオーナーシップを強固に結束させる、最も効果的なアンカリング（錨付け）として機能している。
2. “わちゃわちゃ”に宿るオーセンティシティ ― パフォーマンス・ペルソナとの戦略的乖離
BE:FIRSTのコンテンツの魅力は、ステージ上で見せる研ぎ澄まされたパフォーマンスと、YouTubeで見せる「わちゃわちゃ」感との間に存在する鮮やかなコントラストにある。今回の動画冒頭、JUNONが椅子から転げ落ちるハプニングは、その象徴だ。
「清々ちぃからのジュノン大事故でもう初っ端からBE:FIRSTすぎるてw」
これは、緻密に計算された「アイドル・ペルソナ」の提示とは一線を画す。彼らが実践しているのは、多面的な自己の「オーセンティシティ（真正性）」の開示である。ステージ上ではアーティストとしての自己を極限まで高め、オフステージでは等身大の青年としての自己を隠さない。この戦略的な乖離は、視聴者に対して「作られた虚像」ではなく「信頼できる人間」という認識を植え付ける。
パフォーマンス心理学において、最高の演技は没入状態（フロー）から生まれるが、その反動としてオフの弛緩状態が存在する。彼らはこの両極を包み隠さず見せることで、キャラクターの奥行きと人間的魅力を最大化しているのだ。予測不能なハプニングは、計算不可能な「真正性」が発露した瞬間であり、ファンとの心理的距離を劇的に縮める効果を持つ。
3. コメント欄というエコシステム ― UGCが駆動する共創型コミュニティの可視化
本動画のコメント欄は、単なる感想の集積地ではない。BE:FIRSTとBESTY（ファン）が相互作用し、文化を育む「デジタル・エコシステム」そのものである。
- 感謝と祝福の声: アーティストへのポジティブなフィードバック
- 変わらない魅力への共感: コミュニティ内の価値観の再確認と強化
- 新規ファンからの声: コミュニティへの新規参入障壁の低さ
「ラスピからザファ見て沼った私だけど、ほんとに浅いファンの私だけど…こんなにしたわせにしてくれてありがとう。」
特筆すべきは、新規ファンを古参ファンが温かく迎え入れる文化が自然発生している点だ。これは、コミュニティが排他的にならず、持続的に成長するための不可欠な要素である。ファンが生成するコンテンツ（UGC: User Generated Content）の質と量は、コミュニティの健全性を示すバロメーターとなる。このコメント欄は、ファンが新たなファンを呼び込む「MGM（Member Get Member）」の好循環が機能している証左であり、BE:FIRSTというブランドが、ファン自身によって維持・拡大されていることを示している。
4. 5年目への布石 ― オンラインとオフラインを繋ぐエンゲージメント・ループ
動画の最後に告知されたベストアルバム『BE:ST』、ファンミーティング、そして『BMSG FES’25』。これらは、単なる今後の活動予定ではない。これまでオンライン上で築き上げてきた強固なコミュニティを、オフライン（リアル）での体験へと接続し、エンゲージメントを永続的に循環させるための戦略的布石である。
この一連の流れは、以下の「エンゲージメント・ループ」を完成させる。
- オンラインでの関係構築（YouTube, SNS）
- オフラインでの体験共有（ライブ, ファンミーティング）
- 体験のオンラインでの拡散（感想の投稿、UGCの創出）
- 新規ファンの獲得と既存ファンのエンゲージメント深化（1.へ戻る）
このループを回し続けることで、コミュニティは自己増殖的に活性化し、アーティストとファンの絆はより不可逆的なものとなる。BE:FIRSTは、4年という歳月をかけてこの強力なループの基盤を築き上げたのだ。
【結論】BE:FIRSTが提示する、未来のエンターテインメントの形
『You’re My “BESTY” #60』を通じて明らかになったのは、BE:FIRSTの成功が、音楽的才能やビジュアルといった表層的な要素のみに依存するものではないという事実である。彼らの真の強みは、「オーセンティシティ」を核に据え、ファンを「共同創造者」として巻き込むことで築き上げた、強靭なコミュニティ・ブランドにある。
「事務所もなかった」という原点から始まった彼らの物語は、もはや一つのグループのサクセスストーリーにとどまらない。それは、情報が民主化され、誰もが発信者となりうる現代において、企業やブランドが顧客といかにして深く、持続的な関係を築くべきかという問いに対する、一つの実践的な回答である。
5年目、そしてその先へ。BE:FIRSTとBESTYが共創していく未来は、日本の音楽業界のみならず、あらゆる分野のコミュニティ・マーケティングに新たなパラダイムを提示し続けるだろう。我々は今、エンターテインメントの歴史が更新される瞬間を目の当たりにしているのかもしれない。
▼BE:FIRST Best Album『BE:ST』
https://befirst-sp.com/BEST/
▼BE:FIRST 2nd Fan Meeting – Hello My ”BESTY” vol.2 –
https://befirst.tokyo/tour/hello-my-besty2/
▼BMSG FES’25
https://bmsgfes.tokyo/
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