高市新総裁と公明党、連立政権の未来：靖国参拝問題と試練

結論： 自民党初の女性総裁である高市早苗氏の誕生は歴史的な転換点となる一方、長年の連立相手である公明党との関係に早々に軋みが生じており、その行方は今後の政権運営を左右する重要な試金石となる。靖国神社参拝問題に象徴される歴史認識の相違に加え、学会内部からの離脱の声も聞こえる中で、高市氏が連立を維持しつつ、いかに政策課題を推進していくのか、その手腕が問われている。

1. 時代の転換点：高市早苗氏、初の女性自民党総裁誕生とその背景

2025年10月5日、自民党総裁選において高市早苗氏が選出された。これは、自民党史上のみならず、日本の政治史においても画期的な出来事である。初の女性総裁誕生は、長らく男性中心であった日本の政治構造に変化をもたらし、多様性の尊重という現代社会の価値観を反映する象徴的な出来事と言えるだろう。

高市氏の選出は、保守層からの支持を背景としつつ、自民党の多様性をアピールする上でも有効であった。しかし、この歴史的な勝利の裏には、長年の連立相手である公明党との関係という、乗り越えるべき大きな課題が横たわっている。

2. 公明党からの「待った」：靖国参拝と歴史認識の違い

高市新総裁の誕生直後から、連立パートナーである公明党から早くも懸念の声が上がった。その主要な原因の一つが、高市氏の靖国神社参拝に対する姿勢である。

自民党総裁選で高市早苗氏（64）が初の女性総裁に選ばれました。ところが、連立のパートナーである公明党からは早速、靖国神社参拝や外国人政策などを巡って懸念を伝えられる異例の対応を受けました。引用元: 自民新総裁は高市氏　初の女性　靖国参拝などで公明から早くも懸念【もっと知りたい！】【グッド！モーニング】(2025年10月5日)

この対応は、連立政権というパートナーシップにおける異例の事態であり、今後の政権運営に大きな影響を与える可能性を示唆している。

公明党が靖国神社参拝を懸念する背景には、歴史認識の違いという根深い問題がある。靖国神社は、日本の近代における戦争で亡くなった人たちを祀る神社であるが、A級戦犯を含む戦争責任者も合祀されている。公明党は、平和主義を党是とし、過去の戦争に対する反省を深める立場から、戦争責任を問われた人物が祀られている靖国神社への参拝に慎重な姿勢をとっている。

高市氏は、保守的な政治家であり、過去に靖国神社を参拝した経験がある。これは、歴史観における相違を浮き彫りにし、両党間の溝を深める要因となっている。このような歴史認識の違いは、単なる政治的な対立を超え、両党の支持基盤である有権者の価値観にも深く関わっており、解決を困難にしている。

3. 連立解消の可能性と政権運営への影響

公明党が懸念事項の解消を求めていることは、連立政権の継続における重要な条件となっている。もしこの懸念が解消されなければ、連立解消という事態も現実味を帯びてくる。

公明・斉藤代表「懸念解消なくして連立はない」　政治とカネの問題や靖国参拝に懸念(2025年10月5日) 引用元: 公明・斉藤代表「懸念解消なくして連立はない」政治とカネの問題や靖国参拝に懸念(2025年10月5日)

連立が解消となれば、高市政権は、国会運営において様々な困難に直面するだろう。まず、国会における安定多数を失い、法案の成立が難しくなる可能性が高まる。特に、衆議院での過半数割れは、内閣不信任決議案可決のリスクを高め、政権基盤を揺るがす事態を招きかねない。

連立解消は、高市氏にとって、政策実現の面でも大きな制約となる。例えば、安全保障関連法案や憲法改正といった重要法案の成立には、与党間の協調が不可欠であり、単独での国会運営では実現が困難になる。

また、連立解消は、高市氏が掲げる政策の実現にも影響を与える可能性がある。例えば、経済政策や社会保障制度改革など、国民生活に深く関わる政策の実現には、野党との協力が不可欠となる場合がある。

連立解消した場合、高市氏は野党との連携を模索せざるを得なくなる。しかし、野党との間にも、政策的な相違や対立が存在し、必ずしも容易に連携できるとは限らない。高市氏の手腕が問われるのは、まさにこの点であり、野党との交渉を通じて、いかに政策合意を形成し、国会運営を円滑に進めるかが、その手腕の試金石となるだろう。

4. 揺れる学会：連立離脱の声とその背景

高市新総裁の誕生は、公明党内部にも動揺を与えている。

公明党、高市早苗新総裁に動揺広がる　「学会内に連立離脱の声も」引用元: 公明党、高市早苗新総裁に動揺広がる　「学会内に連立離脱の声も」：朝日新聞

創価学会員の中には、高市氏の政治姿勢に対して、不安や懸念を抱く人々もいる。創価学会は、平和主義や人権尊重を重視する価値観を共有しており、保守的な政治家である高市氏の思想と、その一部が相容れないと感じている可能性がある。学会員の間で連立離脱の声が上がる背景には、このような価値観の相違や、高市氏の靖国神社参拝に対する懸念などがあると考えられる。

公明党と創価学会の関係は、政教一致という批判も受けやすいデリケートな関係にある。学会員の中には、連立解消によって、宗教的な価値観と政治的な判断のバランスを再考する動きも出てくるかもしれない。

5. 試練を乗り越えるために：高市新総裁に求められるもの

高市早苗氏が、今後直面する試練を乗り越えるためには、以下の点が重要となるだろう。

公明党との建設的な対話: 靖国神社参拝問題をはじめとする懸念事項について、公明党との間で真摯な対話を行い、相互理解を深めることが不可欠である。
政策的な妥協と協力: 連立を維持するためには、政策的な妥協も必要となる可能性がある。同時に、両党が協力して、国民が求める政策課題に取り組む姿勢を示すことが重要である。
支持基盤への配慮: 公明党の支持基盤である創価学会の価値観に配慮し、理解を示す姿勢を示すことが重要である。
国民への説明責任: 政策決定のプロセスや、連立政権のあり方について、国民に対して丁寧に説明し、理解を求めることが重要である。

高市氏のリーダーシップは、これらの試練を乗り越えることができるかにかかっている。